「燕にしかない品質を創る」燕物産株式会社 代表取締役社長 捧和雄さん

「ひとしごと」は、燕市の企業(しごと)とそこに働く「ひと」を紹介するインタビュー記事です

本日のインタビューは、日本で最初に洋食器を作り、洋食器業界の草分けとなった企業・燕物産株式会社の捧社長にお話を伺います。

燕物産さんといえば、2011年には金属洋食器製造100年を迎えられ、先日も「天皇の料理番」(TBSテレビ)で洋食器が使用されるなど、押しも押されぬ老舗の イメージがありますが、これまでの歩みには幾度も試練がありました。
その企業としての歩みを、捧社長ご自身の経歴を通してお話を伺いました。

家業を継ぐ者として期待された学生時代

-この記事を読む人は学生が多いと思いますので、社長の学生のころをお聞かせいただけませんか。

「私は一人息子で、家は代々続く金物屋の家、家業の燕物産を継ぐことが生まれたときから決まっていました。
大学でも経営学を学びました。私が学生のころはちょうど高度成長期で、メイドインジャパンが価格と品質で世界を席巻していましたから、洋食器の製造もほとんど海外向け。父からも、海外の取引先と英語で商談ができるようにと期待されました。そこでニューヨークに留学することになったのですが、ただ英語の勉強だけでなくMBA(経営学修士)を取りました。」

-そのころからMBAってあったんですね。

「当時は金融関係の企業派遣ばかりでした。当時の同級生はほとんど、のちに上場企業の経営者として活躍されました。」

-今の経営者としての基盤はそのころに作られたのですね。

社会人としてのスタート 海外を回って10年

-卒業後はすぐに燕物産に入社されたのですか。

「そうです。英語に慣れているということで、入社してすぐに商社を通さない海外との直接輸出を担当しました。海外の見本市での商談が主な仕事でしたね」

-見本市というと、製品をもって出展するんですか。

「当時はOEM(他社ブランドの受注生産)がメインだったので、営業先は海外のバイヤーでした。
デザインを発注元が用意してくれて、我々は製造を請け負う。品質が良く価格競争力もある燕の洋食器は、当時製造元として信頼を獲得していましたのでいろいろ仕事がもらえました。
年2回、フランクフルト、ニューヨーク、シカゴ、ロスアンゼルスと、10年間回りました」

-当時は本当に輸出中心だったんですね。

円高と中国の台頭 自社ブランドの再発見

-一時は世界的に支持されていた燕の洋食器が勢いを失ったのは何があったんでしょうか。

「為替が急に円高になって日本の価格が割高になったことと、もう一つは中国の台頭でしょう。中国はとにかく工賃が安かったので、燕の洋食器は値段で勝負できなくなってしまいました。」

-品質はどうなんでしょう

「もちろん、品質は日本、そして燕のほうが今も昔もいいものを作っていました。でもバイヤーからすると、製造元はまず価格が第一。ですから急に海外の仕事がなくなりました。」

-海外で売れないとなったらどうしたらいいんでしょうか。

「私が取り組んだのは、国内向けに自社のオリジナルデザイン製品を開発することでした。
もともと燕物産は技術も信用もありましたし、永年、自社デザインの製品を国内市場に販売して、お得意様からご愛用いただいていました。ですが、海外のOEMの仕事に注力するあまり、それらをきちんと育ててこなかった。
ゼロから作ったわけではなく昔から積み上げてきた製品やデザインを再発見・再評価して、主力製品に位置付けたんです。」

-伝統の月桂樹(ローレル)に加えて斬新なスタンディングナイフなどの開発などですね

「高級品ももちろん大事にしていますが、日用品として品質のいいものを使っていただくことも、メーカーの仕事だと思います。
ファミリーレストランチェーンなどでも、当社の製品をよく使っていただいています。品質で燕のものを使うか、値段で中国製品を使うか。そこはお店の考え方で変わってくることだと思います。」

-製品が変わると製造の仕方も変わりますか

「これまでとにかく大量生産だったのが、少量多品種短納期のものづくりに変わりました。技術を充実してお客様の要望に応えられる品質を実現できる、そんな体制に変えています。」

「燕にしかない品質を創る」燕物産株式会社 代表取締役社長 捧和雄さん

いつか必ず燕の品質が求められる

-燕のものづくりはこれからどうなっていくとお考えですか

「今は国内向けの製品を作っていることが多いですが、海外向けブランドとして成功している会社さんもあります。
中国の経済が発展して今までのように安く製品を作れなくなると、マーケットのニーズが変わってくるかもしれません。今すでに、欧米のユーザーは中国製品の品質に満足しなくなっています。
先日、17年ぶりにフランクフルトの見本市に行ってきました。三日間かけて会場の全製品を見てきました。やはり、世界の品質要求に応えられる技術は燕にしかありません。燕の品質が世界から求められる日が必ず来ると思います。」

-そうなると、私たち若い世代に求められることは何でしょうか

「一つは技術の継承をきちんとしていくことだと思います。
それと、品質に対する考え方といいますか、職人魂といいますか。燕のものづくりを大事にする考え方、仕事についての考え方を、私たちと一緒に受け継いでいってもらえたらうれしいですね。」

-本日は捧社長のものづくりに対する真摯なお気持ちが伝わるお話を伺えました。ありがとうございました。

会社紹介

燕物産株式会社
http://www.tbcljp.com/

本社工場
〒959-1276 新潟県燕市小池3501番地
電話:0256-63-6511
FAX:0256-63-6516